Believe

200日間の奮闘努力。200日間の笑いと涙。彼らのまなざしに心が動く。

たしかに道のりは簡単ではなかった。ビデオカメラや三脚に初めて触れてから、200日もの時間をかけて練習した。でも、だからと言って、涙の根性ドラマというわけではない。ここには何より笑いがある。喜びがある。希望と優しさがあふれている。小泉首相やKONISHIKIへの突撃インタビュー、撮影に取り組む真剣そのもののまなざし……。新しいことに挑戦する時の喜び、ひとつのことを責任をもって成し遂げることから生まれる自信が彼らを輝かせている。

「障がい者はできないのではない。社会が彼らをできないと思って、できなくさせているのだ」

1999年、監督・小栗謙一が初めて訪れたアメリカのノースカロライナでのスペシャルオリンピックス夏季世界大会で、スペシャルオリンピックス※1創設者のユニス・ケネディー・シュライバー夫人はこんなスピーチをした。この言葉は小栗監督の心から消える事はなかった。そこから小栗は、毎日映画コンクール記録文化映画賞を受賞した「エイブル」(02)、2003年のアイルランドでの夏季世界大会を舞台にした「ホストタウン」(04)で知的発達障がいのある人たちを描いてきた。

そして今回、シリーズ第3弾となる「ビリーブ」を製作するにあたり、監督が目指したことは「彼らと一緒に映画をつくること」だった。この構想のもととなったのは'99年の世界大会で出会った“スペシャルオリンピックス・ロードアイランド・マガジン※2”という知的発達障がいのあるTVクルーの存在である。月1回の番組を自分たちで取材し、自分たちで番組にする。自立して働く彼らの「自分を信じる力」、そしてそれを支える社会の「彼らを信じる力」。同時にそれは障がいのある人たちが、そうでない人を「信じる」ことでもある。そこから、この映画の製作はスタートした。

9人のBelieveクルーを支えたのは、11人のプロフェッショナルなスタッフたち。

温かい声のナレーションは、俳優・滝田栄。音楽には、世界的指揮者・小林研一郎。映画の製作総指揮には、これまでと同様スペシャルオリンピックス日本前理事長の細川佳代子があたり、able映画製作委員会に寄せられた多くの方々の寄付金によって映画は完成した。

※1.スペシャルオリンピックスとは

知的発達障がいのある人たちに、日常的なスポーツトレーニングと、その成果の発表の場である競技会を年間を通じて提供し、彼らの社会参加をサポートする国際的なスポーツ組織。スペシャルオリンピックス(SO)の活動は、多くの市民ボランティアによって支えられている。 「Special Olimpics」と名称が複数形なのは、日常的なトレーニングから世界大会にいたるまで、いつでも、世界中のどこかで、この活動が行われているから。SOでは、スポーツ活動に参加する知的発達障がいのある人を「アスリート」と呼んでいる。

SOの始まりには、元アメリカ大統領ケネディ一家の物語がある。大統領であったジョン・F・ケネディには知的発達障がいのある妹ローズマリーがいた。そして、その下の妹だったユニスは、障がいのために外出さえも禁じられた姉ローズマリーへの深い思いから、1963年、自宅の庭を知的障がいのある人たちに解放してディキャンプを始めたのだ。ユニスの活動は、ジョセフ・P・ケネディ・ジュニア財団の支援のもと1968年に組織化され、「スペシャルオリンピックス」となり、全米をはじめ、世界へ広がっていったのである。

SO国際本部の総裁は、創設者ユニス・ケネディ・シュライバー夫人の子息ティモシーが務めている。また、ユニスの娘マリアの夫であるアーノルド・シュワルツネッガーが、サポーターとして活動に協力していることも良く知られている。

現在では、世界150カ国以上で、約170万人のアスリートと50万人のボランティアが参加し、1968年に始まった世界大会も今では世界最大規模のスポーツイベントのひとつ。発祥の地であるアメリカでは、オリンピック、フットボールのスーパーボール、野球のワールドシリーズに次いで有名なスポーツイベントといわれる。ケネディ家の故郷であるアイルランドで開催された2003年夏期世界大会にはネルソン・マンデラ、モハメド・アリ、U2、コリン・ファレルといった有名人がすすんで参加した。 SOは、世界のあらゆる場所で、ひとりひとりの個人が、知的発達障がいによって可能性を閉じられることなく、自然にあるがままに受け入れられ、認められるような社会になることを願っている。

※2.スペシャルオリンピックス・ロードアイランド・マガジンとは

アメリカのパブリック・アクセスチャンネルのTV局COXコミュニケーションズとスペシャルオリンピックス・USAロードアイランドが協力し、1994年に「スペシャル・オリンピックス・ロードアイランド・マガジン」(以下SOロードアイランド・マガジン)というタイトルの番組が始まった。

その製作スタッフのほとんどは知的発達障がいのあるアスリートたち。COXコミュニケーションズは彼らにスタジオの使用や機材の提供、有志スタッフによる製作サポートといった形で協力している。番組は5~7分のパートで構成され、スペシャルオリンピックスの競技や、アスリートやコーチ達へのインタビュー、また地域の著名人へのインタビューなども行っている。月1回、30分番組として製作され、スタジオ収録もある。司会者、レポーター、ディレクター、カメラマン、音響などすべての分野を、知的発達障がいのあるアスリートが担当している。

現在は、毎月の第3火曜日に収録、30分番組として編集後、翌月にTV局COX3から火曜日の5:30pm、土曜日の9:30amと6:00pm、日曜日の11:30amと6:00pmの5回放送されている。スポンサーもついている人気番組だ。

番組クルーは、1999年のノースカロライナでの夏季世界大会で、どのようにこの番組が彼らによって制作されるかをデモンストレーションした。この大会で、小栗謙一監督が彼らクルーに出会ったことが、本作『ビリーブ』の構想のきっかけとなっている。

長野での冬季世界大会期間中、Believeクルーはスペシャルオリンピックス創設者ユニス・ケネディ・シェライバー夫人へのインタビューをSOロードアイランド・マガジンのクルーと共同で行った。 SOロードアイランド・マガジンが製作した60分のスペシャル番組は2005年6月10日にアメリカで放送された。